はじめに
こんにちは。エンジニアリングマネージャーの渡邊健太です。
ギフティでは1月からの新年度にあわせて全社的な組織改編が行われ、エンジニアリング組織も大きくアップデートがありました。今回はこの組織変更について、その背景や狙いとともに3ヶ月経ったところでの振り返りと今後について、CTOの柳瀬さんに語っていただいた内容をお届けします。
組織改編の概要
2022年度の組織改編を簡単に図解するとこんな感じです。
デフォルメされたこの図だけではわかりにくいので補足すると、従来は事業部制で各事業ごとにビジネスとエンジニアとが同居する組織構成でしたが、今回の組織改編では事業のくくりは残しつつ技術職を技術本部として1つにまとめた形になります。
技術組織再編の狙い
渡邊:これまで事業部ごとに別れていたエンジニアリング組織が、今回技術本部としてまとまりました。その大きな狙いを教えて下さい。
柳瀬:これまでのギフティ全体の体制としては、全社の行動指針の1つである『ギークスーツ』を強く具現化するような組織体系だったと思っています。 事業部制として各事業部の組織の中にエンジニアが在籍しており、「エンジニア」という職能としての全社的な明確なくくりはありませんでした。そのため、事業とかプロダクトに事業部の全員が密に向き合って開発するということがやりやすい組織でした。 ただ会社の規模が大きくなり事業自体が増えていく、かつリモートワークがメインになっている状況において、徐々に技術職全体でのコミュニケーションに課題を感じるようにもなりました。
渡邊:特にどんな課題を感じていたのですか。
柳瀬:どんな組織にも、オフィシャルな組織構造として存在しているコミュニケーションラインとアンオフィシャルな形で存在しているコミュニケーションのラインがあると思っています。従来のようにみんながオフィスにいたときは、明確なエンジニアとしてのくくりがなくてもエンジニア同士の連携が一定自然に発生していたかなと思っていたんですが、やっぱりそういうものがかなり少なくなってしまったと感じました。
また事業のフェーズも少しずつ変わってきていて、いわゆるプロダクトマネジメント領域までエンジニアがグラデーションでやっていくっていうのは引き続きあっていいかなと思ってはいるものの、いまの事業規模的にはエンジニアリングとプロダクトマネジメントを兼任するのはかなり難易度が上がってきているというのも認識していました。
渡邊:その課題を組織の形で解決していくというのが狙いだったのですね。
柳瀬:そうですね。会社としてもプロダクト組織というのを明確につくりプロダクトマネジメントをより強化していく、あわせてこれまでアンオフィシャルなコミュニケーションしかなかったエンジニアリング組織を技術本部という組織として立ち上げることによって、ちょっと弱くなってしまっていたエンジニア間の横のつながりとか、エンジニアやディレクターの生産性向上や技術育成など、これまでは自然発生的な活動に任されていたものに組織としてちゃんと取り組みやすくしていくことを、従来のように事業との距離感が近いまま実現することを目指して今回の形にしました。
渡邊:この組織改編はいつ頃から議論されてデザインしていったんですか?
柳瀬:昨年の秋頃からですね。組織的な課題が表面化してきたところがあったり、事業の成長フェーズ、特にgiftee for Business事業では実質プロダクトチームが立ち上がっているという状態になりつつあったのでそれを明確に組織構造に反映していって、会社としてこういう体制を目指すんだっていうのをちゃんと定義しに行ったという形ですね。
現状の分析と今後に向けて
渡邊:組織改編からこれまでの3ヶ月を振り返って、率直なところを聞いてみたいです。
柳瀬:今までやろうと思っていたけどやり辛かった、ということがかなり動かせるようになったかなと思っています。 これは組織改編だけでなくPlatform Unitという組織横断で基盤まわりや開発標準の整備を行うチームが立ち上がったということも含めてであるんですけど、開発組織に対して横串で取り組むべき課題に関して、技術軸の取り組みも組織軸の取り組みも具体的なアクションがずっと進みやすくなったと思っています。
渡邊:技術軸、組織軸での取り組みでいま進捗していると感じているものをそれぞれ教えて下さい。
柳瀬:技術軸だと、データ基盤の整備だったりモニタリングの体制や仕組みの整備であるとか、そういった開発標準的な会社としてのプロセス整備や働きかけがかなりやりやすくなりました。事業に向き合っている各チームに対する横断的なコミュニケーションがとりやすいのと、そういうミッションを明確に持ったチームを置けたので大きく進展しています。 また組織軸では、エンジニアリングマネージャーとして健太さんに入ってもらったことがやっぱりインパクトとしてあって、やりたいなと思っていたけど手が回らなかったことを、ちゃんと形にしていただいているというはすごくあって、チーム外のエンジニアとのコミュニケーションやそれを通じて得られる学び、気付きのきっかけとなる機会が組織改編以前よりもかなり増えていて手応えを感じているところです。
渡邊:組織全体のコミュニケーションの部分では、以前と比べて目に見えて良くなったと感じるところはありますか。
柳瀬:全体的にはいろんなレイヤーで感じていることがあるんですが、特に大きなところではチームのマネージャー層のコミュニケーションですね。 組織が大きくなってくるとどうしても他のチームの同じポジションの人たちとコミュニケーションをとる機会が減ってしまいがちなんですが、組織改編を機にマネージャー間の定例会議を設けたことで、各チームの進捗だけではなくて隣のチームが何に悩んでいてどうしようとしているのかが前よりもずっと分かるようになってきています。
また、組織としてこうしたいんだというのを全体に落とし込む際には各チームのマネージャーの協力が必要になってくるので、その連携がずっとやりやすくなりました。 このマネジメントレイヤーのコミュニケーションは良くなったと感じるところですね。
渡邊:組織軸での取り組みの1つとして、チームを超えての技術的な関心事でゆるくつながるコミュニティを「ギルド」という名前ではじめましたけど、これまで自然と行われてきた学びの関係性を明確化したことで、継続する意思が働きやすいなというのはやっぱり感じますよね。
では、技術本部全体としてさらにこうなっているといいなということはありますか。
柳瀬:各レイヤーでのコミュニケーションや、組織横断のギルドのような学びのコミュニティで横のつながりを作ったり連携しやすくなったりというのはうまく行っていると感じますが、一方で技術本部全体での交流やその枠での学びの機会などをもっと作っていきたいと思っています。 特にいまはリモートワークが中心で全体的なコミュニケーションがどうしても希薄化してしまうので、本部全体での交流機会を作っていきたい。 社員旅行もここ数年やれていなくて、そういう機会がない中でもいろんな人のパーソナリティであるとかどんな思いで仕事しているのかだとか、どういう強みや興味があるのか相互に理解を深めることが、働く上での楽しさや良い人間関係、新しい発見につながっていくと思っていて、そういう一体感を醸成する機会が改めて必要になってきていると感じます。
会社全体でやるっていうのが、規模感としても社会情勢としてもだんだん難しくなってきているので、技術本部という枠で一体感をもう少し強めたいという思いがあります。
渡邊:今後も続けていきたいことやこれからも残していきたいカルチャーなどはどんなものでしょうか?
柳瀬:冒頭話した『ギークスーツ』っていう文化、事業やプロダクトにエンジニアもちゃんと向き合うっていうのは引き続き大事にしていきたいと思っています。 これはうっかりすると技術本部としての取り組みと綱引きになってしまう側面も、やり方を間違えると起きうると思っています。ただ結局は最終的に事業とかプロダクトの成長のために技術本部の様々な取り組みをやっていて、それは中長期的には絶対に目線があうはずなんです。 なのでこれを両立するんだっていう思いとともに、手段と目的がひっくり返らないようにして、技術本部がちゃんと事業とプロダクトの成長に貢献していく意識を大事にしていきたいと思っています。
渡邊:では組織改編から現状までの3ヶ月を振り返ると、手応えというか満足度的にはどんな感じでしょうか。
柳瀬:現時点においては基本的には満足度は高くて、以前からやりたいなと思っていたことが組織改編や必要な機能を持ったチームの設置などもあって確実にやりやすくなっているというのはありますね。 反面、そういった技術組織としての取り組みを進める際に、どういうコミュニケーションをとり、どう進めて行くかは試行錯誤している部分があります。とはいえ組織として新しい取り組みを始める際にはどうしても発生する事だとも思っているので、そこは向き合いつつ継続的にチューニングして行ければと思っています。
ギフティのエンジニアバリュー
渡邊:ギフティのエンジニアバリューも、このタイミングで一部変更がありましたね。この背景も教えて下さい。
柳瀬:4つのエンジニアバリューのうち、「掘り下げきる」を『牛刀割鶏』という言葉に変えました。この言葉の意味を改めて説明すると、牛肉を切るための大きな包丁で小さな鶏肉を切る様を表していて、課題解決の手段が課題そのものに対して過剰である様子を戒める言葉としての四字熟語です。これを解決するのにそんなに大ごとにする必要あるの、っていう。 もともとあった「掘り下げきる」というバリューは、エンジニアが技術だけに追求しすぎるとともするとオーバーエンジニアリングになってしまいがちで、顧客が「これ欲しい」って言われたものを言葉通りにただ作ると結局変なものというか、本当はなくてもいいものが出来上がってしまったりすることがある。作ったらお守りも必要になってきて、雪だるま式に無駄な仕事が増えていくっていうことが起こってほしくないなっていう思いで、「それ本当に作る必要あるんだっけ」っていうのをエンジニアもちゃんと掘り下げて考えて議論してものづくりに向き合って欲しいという意味で選んだ言葉でした。
この「掘り下げきる」という言葉で表現したかったことが『牛刀割鶏』が指しているものが割と通じるところが大きいかなと思って、覚えてもらいやすいキャッチーなワーディングでもあったのでこのタイミングで変えてみました。
渡邊:もともとあったバリューが変わったのではなくワーディングが変わっただけで、エンジニアも本質的な価値を議論しながらプロダクトに向き合ってほしいという意味であって、そういう姿勢を技術本部の個々のメンバーに求めているということですね。
柳瀬:エンジニアだからと技術の話だけに引っ込んでしまうのではなくて、エンジニア以外の人ともフラットに議論してほしいし、そういう対話を通じてしかビジネスやプロダクト側とエンジニアがお互いのことを理解し合えないと思っています。今のコンテキストだとエンジニアからビジネス側やプロダクト側に聞きに行くっていう風なイメージになってしまう傾向も感じていますが、実際にはこういうきっかけから生まれた対話の中から、ビジネス側・プロダクト側に、エンジニア側の事情であるとか大事にしていることみたいのを理解してもらうような、お互いの相互理解につながる話だと思っています。 そういうところに踏み込んで議論することを是とする会社であり続けたいし、違う文化から来た人であってもそういう向き合い方をしてほしいと思っています。 またそういうコミュニケーションとともに仕事をしてきた人にとってはすごく噛み合うんじゃないかと思っています。
まとめ
渡邊:最後に、CTOとしてギフティのエンジニア組織をこうしていきたい、というようなグランドビジョンを聞かせてください。
柳瀬:改めて思ったのが、ギフティのエンジニアバリューの中に『正しい変化』というのがあります。あれは主にプロダクトの姿をイメージして書かれたものではあるんですが、やっぱり組織側も「正しく変化する」っていうのが大事だなと。これからも「正しい変化」をずっと続けていく組織でありたいと思っています。 いまのこの組織でずっと行くわけではないですし、最近グループ会社のソウ・エクスペリエンスの方と話す機会があって、その中でグループとして技術側をどうやっていくかとか、技術的なグループ会社間のシナジーみたいのもやっていく必要があるよねという会話をしたりしてて、会社・グループとして必要になってくることやより最適な組織のためにどうするのか、というのは会社が成長している以上絶対変わり続けるものだと思っているので、その時々にあわせてちゃんと正しく変化をする組織でありたい。
また正しく変化していく組織の中で個々人の成長というのがとても大事だし、個々の成長を実現しやすい環境や機会を提供できる場でありたいと思っています。 一人ひとりが成長していくためには組織としての構造的な変化だったりそれぞれの組織内での立ち位置の変化だったりも当然必要になってくるので、そういう変化を恐れずチャレンジするっていうのがみんなの価値観として共通認識になっている組織にしていければと思っています。
渡邊:僕も去年の冬にギフティにジョインして、成長意欲の強い若いエンジニアが本当に多いというのが印象的でした。勉強会や情報共有の機会、エンジニアのアウトプットは以前からもたくさんあって、CTOとしての個々人への成長期待というのがちゃんと組織に伝わってるんだなと改めて感じましたし、これから技術本部が組織として大きくなっていく中でこういう大事な文化を残したままスケールさせていくということをやっていきたいですね。
柳瀬:そうですね。組織の成長はこういう積み重ねでしかないと思っています。
おわりに
今回はCTO柳瀬さんに、2022年度からスタートした新体制について、組織のあり方とともにエンジニアとしての価値観についても語っていただきました。
もし少しでもご興味を持っていただけましたら、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう! カジュアル面談のエントリーはこちら