
こんにちは。ギフティVPoEの大曽根です。
現在、多くの企業が生成AIの活用を模索していますが、私たちの組織でもAI推進は最重要テーマの一つです。 技術組織として、私たちは大きく分けて以下の3つの視点で活動を推進しています。
- 全社AIツール利用促進(ガイドライン策定、ツール選定、社内勉強会等)
- エンジニアの開発生産性向上
- AIを活用した「事業価値創出」
今回は、特に3つ目の「AIを活用した事業価値創出」に向けた、私たちのチームの具体的な取り組みと、現在直面しているチャレンジについてご紹介します。
推進体制
現在推進チームは、私を中心とした5名のメンバーで構成されています。メンバー全員が現状「兼務」です。
プロダクト開発エンジニアとプラットフォームエンジニアが混在し、それぞれが自身の担当プロダクトや基盤開発の業務を持ちながら、このAI推進活動を行っています。
専任ではないからこそ、現場の課題感やリアリティを持った施策が打てる一方、限られたリソースでいかに成果を最大化するかが鍵となっています。
もちろん推進チームを兼任メンバーのままにしていくつもりはなく積極的に採用も進めてより強力に推進していく体制を作っています。
チームで足元注力するテーマ・方針
「何でもやる」のではなく、リソースが限られているからこそ「足元で注力すること」「やらないこと」を明確に定義して進めています。
1. テーマ選定の3つの軸
具体的には、以下の3つの軸でテーマを選定し、開発・検証を進めています。
- 全社的にインパクトが大きく、強く推進すべきテーマ
- 例:レコメンドAIエージェントによるUX向上
- 事業部に展開できる「型化」が見込めるテーマ
- 例:Legal(法務)エージェントの構築
- 事業部側に開発リソースがなく、AIでレバレッジが効くテーマ
- 例:採用周りの業務フロー自動化・効率化
これらに当てはまらないものは、足元の優先度を落とす(スコープから外す)ことで、選択と集中を徹底しています。
2. 事業部が自走できるための「基盤構築」
私たちが個別の案件を全て請け負うのではなく、各事業部が自らAIを活用して価値創出できる土壌を作ることも急務です。例えば以下のようなものです。
- データの一元集約
- 営業議事録など、ミーティングから生成される文字起こしデータの集約基盤整備
- セキュアなアクセス
- プライベートMCP(Model Context Protocol)構築による、AIツールから社内データへのアクセス環境
- Dify活用のための基盤整備
- ノーコード/ローコードでのAIアプリ構築環境の整備
3. プロセスとノウハウのオープン化
成果だけを見ると進捗が遅く見えがちなため、プロセスから得られる知見の共有を重視しています。
- Weeklyアップデート
- 小まめな進捗共有と啓蒙
- 月次勉強会
- 推進チームで得られた知見やノウハウの共有
- 事業部オーナーとの伴走
- 特定テーマにおいて事業部側担当を巻き込み、ノウハウをインプットしながら進める
関連組織との連携
この取り組みは、単独チームで完結するものではありません。
- 対 事業本部
- 業務課題や「AIで新しい価値を作れないか?」という相談の窓口として機能。インパクトの大きいものは共同プロジェクトとして推進します。
- 対 技術本部内各チーム
- 開発生産性チーム
- 検証されたツールの連携
- データ基盤チーム
- 分析の容易化に向けた連携
- プロダクトセキュリティ・インフラ
- AI駆動で開発したモックアップを、迅速かつ安全にデプロイできる環境の構築
- 開発生産性チーム
現在のチャレンジと次の一手
活動を通じて見えてきた課題(チャレンジ)と、それに対する技術組織としてのアクションについて整理します。
「個人の効率化」から「組織的な本番運用」への壁
最近では、Vibe codingなどで個人の業務を効率化したり、手元でプロダクトのプロトタイプを作るハードルは劇的に下がってきています。
しかし、それを「全社で利用できる仕組み」にしたり、「社外(顧客)への本番活用」へ移行しようとすると、途端にハードルが上がります。 情報の取り扱い、セキュリティ、インフラ構築、コード品質など、これらは実際に本番運用に乗せるトライをしないと、体感値として課題を認識できません。
私たちはR&D(研究開発)で終わらせず、泥臭い実装や運用の課題を一つひとつクリアし、定常利用まで持っていくことをミッションとしています。
全社を牽引する役割
AI技術の進展は凄まじいスピードです。
このチームが先行して新しい技術をキャッチアップし、社内へ展開・啓蒙していく役割は非常に重要だと考えています。
私たちの役割は、全ての個別テーマに取り組むことではなく、「特定のハイインパクトなテーマで成功事例を作りつつ、各事業部が自走してAI活用できる下地(基盤・ノウハウ)を作ること」だと定義しています。
AI駆動開発の実践・検証
そして、既存プロセスの改善にとどまらず、開発のあり方そのものを変える取り組みにも取り組んでいきます。
具体的には、直近の新規開発案件において、AIを前提としたプロダクト開発(いわゆるAI駆動開発)を試行します。 従来の開発フローにツールとしてAIを足すのではなく、「AIがある前提でゼロから開発プロセスを組むとどうなるか?」を実戦の中で検証します。この取り組みを通じて、AIを前提としたあるべき開発プロセスを定義・設計し、全社へ還元していく予定です。
今後も、このブログでAI活用推進の具体的事例やノウハウの共有やAI駆動開発の検証結果などを発信していく予定です。